「最近、家づくりの情報収集をしていると、『高気密高断熱』という言葉をよく耳にするけど、結局いくらくらいするの?」
「快適な家には住みたいけど、予算は限られているし、高気密高断熱住宅ってすごく高いイメージがある…」
「都会の狭い土地でも、高気密高断熱住宅って建てられるものなの?」
家づくりを真剣に検討されている方にとって、「高気密高断熱住宅」は非常に魅力的な選択肢ですよね。
YouTubeや住宅雑誌などでもその重要性が叫ばれ、快適性や省エネ性への期待が高まっている一方、気になるのはやはり「費用」ではないでしょうか。
こんにちは、ぽよよ先輩です!理系大学院を卒業後、メーカーの開発職を経て現在はインフラ事業の企画に携わっています。私自身もローコストメーカーで家づくりを経験し、その中で得た知識や後悔した点などを「家づくりの引き継ぎガイド」としてまとめています。2児の父として育児にも本気で取り組む30代半ばの私が、今回は「高気密高断熱住宅のリアルな相場」について、私の知見と推測を交えながら深掘りしていきます。
こんな人に読んでほしい
高気密高断熱住宅に強い興味がある人: 漠然としたイメージだけでなく、具体的な費用感を掴みたい
高気密高断熱住宅の費用について、具体的な情報が手に入らず困っている人: ネットや情報誌で値段があまり書かれていないと感じている。
限られた予算の中で、高気密高断熱住宅が選択肢に入るのか知りたい人: どこまで予算を組めば良いのか、目安を知りたい。
この記事を読むことで、高気密高断熱住宅の費用相場を把握し、ご自身の理想とする家づくりと予算のバランスを考える上での具体的な判断材料となることを目指します。
大前提:そもそも「高気密高断熱住宅」って何?
「高気密高断熱」という言葉はよく聞きますが、実はその厳密な定義はありません。
しかし、世間一般で高気密高断熱住宅と呼ばれているものには、共通して満たすべき3つの重要な要素があると私は考えています。
それは、
設計
気密(C値)
断熱(Ua値)
です。
この3つの要素が揃って初めて、真の意味での「高気密高断熱住宅」が成立すると言えるでしょう。
気密性(C値)とは
目安:C値 1.0 cm²/m² 以下
C値とは、隙間相当面積のことで、建物の延床面積に対する「家の隙間の合計面積」を示します。
数値が小さいほど、家の隙間が少なく、気密性が高いことを意味します。
C値1.0は、ハガキ約半分くらいの隙間しか家全体にない状態を指します。
一般的な住宅ではC値が5.0以上になることも珍しくありませんが、高気密住宅では1.0以下が目標とされます。
気密性が低いと、どんなに良い断熱材を入れても、隙間から暖気や冷気が漏れてしまい、断熱性能を十分に発揮できません。
気密測定は必須であり、設計段階から隙間をなくすための工夫が必要です。
断熱性(Ua値)とは
目安:Ua値 0.46 W/m²K 以下(※地域区分によって最適な数値は異なります)
Ua値とは、外皮平均熱貫流率のことで、建物内部から外部へどれくらい熱が逃げやすいかを示す数値です。
数値が小さいほど、断熱性能が高く、熱が逃げにくいことを意味します。
長期優良住宅の省エネルギー対策等級4(平成11年基準)のUa値0.87以下と比較すると、0.46以下は格段に高い断熱性能を指します。
近年では、G1(Ua値0.56以下)、G2(Ua値0.46以下)、G3(Ua値0.26以下)といったHEAT20という基準が一般的に用いられ、より高い断熱性能を目指す指標となっています。
設計(パッシブデザイン)の重要性
C値やUa値といった数字をいくら追求しても、「設計」が悪ければ、それは真の高気密高断熱住宅とは言えません。
夏の日射遮蔽: 夏場に家の中に直射日光が入り込むのを防ぐ設計です。深い軒や庇、外付けブラインド、落葉樹の植栽などが有効です。日射熱を入れないことで、エアコンの稼働を抑え、冷房負荷を低減します。
冬の日射取得: 冬場に太陽の光を最大限に取り込み、室温を上げる設計です。南面に大きな窓を配置したり、軒の出を調整したりします。日射熱を有効活用することで、暖房負荷を低減し、暖房費を抑えます。
この「日射遮蔽」と「日射取得」のコンセプトが満たされて初めて、その土地の気候条件に合った、省エネで快適な「パッシブハウス」と呼べる高気密高断熱住宅が実現すると私は考えています。
気になる「高気密高断熱住宅」の相場はいくら?
最低限のライン:30坪で総額3,000万円から
結論から言うと、高気密高断熱住宅を建てる場合、延床面積30坪程度の家で、諸費用(地盤改良、建築確認申請費用、外構、家具、照明など)を全て含めると、最低でも3,000万円はかかると推測します。
どんなに安くても、税抜きで2,500万円台、税込みにすれば2,750万円前後になります。
これに地盤改良費(地盤状況によるが数十万円〜百万円以上)、外構工事費(数十万円〜数百万円)、各種申請費用、登記費用、火災保険料、ローン諸費用、カーテンや照明、家具家電の購入費用などを加えると、すぐに3,000万円を超えてくるでしょう。
つまり、「建物本体価格+付帯工事+諸費用」を全て含めた総額で3,000万円を、高気密高断熱住宅の最低ラインとして見ておくべきだと思います。
さらに上を目指す「パッシブハウス」クラスは?
もし、さらに断熱性能を高め、「パッシブハウス」と呼ばれるレベルの超高性能住宅を希望する場合は、総額で3,500万円〜4,000万円以上はかかってくるのではないでしょうか。
パッシブハウスは、極めて高い断熱・気密性能と、徹底したパッシブデザイン(自然エネルギーの活用)を組み合わせることで、冷暖房負荷を極限まで抑えた住宅です。世界的に厳しい基準があり、それをクリアするためには、設計力、施工技術、使用する建材や設備全てにおいて高いレベルが求められます。そのため、やはりそれなりの費用がかかるのは当然と言えるでしょう。
ぶっちゃけて言うと、高気密高断熱住宅、特にパッシブハウスレベルとなると、「なかなかのお値段」がします。
ちなみに、一般的な長期優良住宅やZEH(ゼッチ)レベルであれば、建物本体価格(税抜き)で2,000万円台から、という価格帯のハウスメーカーや工務店も多く存在します。
ただし、これも諸費用を含めると総額はさらに上がることを忘れてはいけません。
「都会」では高気密高断熱住宅は建てられない?
上記の相場を踏まえ、「都会」という特殊な環境で高気密高断熱住宅を建てることの難しさについて考察していきます。
ここで言う「都会」とは、仮に坪単価100万円を超えるような、非常に土地価格が高い地域を想定します。(「そもそもそんなところに家なんて建てられないよ!」と思う方も多いかもしれませんが、あえて極端な例で考えてみましょう。)
都会では、駅へのアクセスが良い場所や利便性の高い場所ほど土地の価格が高騰します。
また、土地の広さも限られるケースがほとんどで、「狭小住宅」が一般的な選択肢となります。
都会の家づくりで直面する費用の壁
例えば、都市部で建てるとして、「狭小住宅」といえども、人が快適に暮らせる最低限の広さ、そして建築基準法や民法上の隣家との距離(最低50cm)を確保しようとすると、土地の広さは最低でも25坪程度は必要になるでしょう。
土地費用: 坪単価100万円 × 25坪 = 2,500万円〜
人気エリアであれば、坪120万円、150万円、それ以上という土地も珍しくありません。すると、これだけで3,000万円を超えることも。
建物費用: 前述の通り、高気密高断熱住宅(30坪程度)であれば、建物本体+付帯工事で2,500万円〜3,000万円(税抜き)
狭小地では、一般的な整形地よりも基礎工事や足場費用などが割高になる傾向があり、坪単価が上がるケースもあります。
単純にこれらを合計すると、土地+建物だけで5,000万円〜5,500万円は最低限かかってしまう計算です。さらに、地盤改良費、外構、家具、照明、各種申請費用、ローン諸費用などの諸費用(約500万円〜1,000万円)を加味すると、総額で6,000万円近く、あるいはそれ以上になることも珍しくありません。
高気密高断熱住宅を「都会」で建てるハードル
このような高額な費用を支払うことができる層は、現状ではかなり限られてくるでしょう。
共働き世帯で、夫婦ともに高い収入がある場合
大企業に勤めており、役職手当などで高収入を得ている場合
親からの資金援助が潤沢にある場合
といったように、経済的に非常に恵まれた層でなければ、現実的に都会で高気密高断熱住宅を建てることは難しいと推測します。
実際のところ、もっと土地の値段が高いエリアも多く、その場合は総額6,000万円〜7,000万円程度かかっても不思議ではありません。
現実的な選択肢は?
となると、よっぽど経済的に恵まれている人以外は、「駅チカ」「都会の中心部」といった好立地をある程度諦め、土地の値段を抑えられる場所で建てることが、高気密高断熱住宅を実現するための現実的な選択肢となるでしょう。
あるいは、広さの優先順位を下げ、20坪以下の極小住宅で高気密高断熱を追求するといった方法も考えられますが、それでも費用は安くありません。
まとめ:高気密高断熱住宅の相場と賢い家づくりのために
今回の記事では、高気密高断熱住宅の定義からリアルな費用相場、そして都会で建てる際のハードルについて深掘りしてきました。
最後に、重要なポイントをまとめておきましょう。
高気密高断熱住宅は、単なる「C値・Ua値」の数値だけでなく、「夏の日射遮蔽」と「冬の日射取得」を考慮したパッシブデザインの「設計」が組み合わさって初めて成立します。
相場としては、延床面積30坪程度の家であれば、諸費用(地盤改良、建築確認申請費用、外構、家具、照明など全て)を含め、最低でも総額3,000万円はかかると推測されます。
さらに断熱性能を高めた「パッシブハウス」クラスを目指す場合は、総額3,500万円〜4,000万円以上の費用を覚悟する必要があるでしょう。
都会(坪100万円超の土地)で高気密高断熱住宅を建てる場合、土地と建物の総額で6,000万円〜7,000万円に達する可能性も高く、経済的に非常に恵まれた層でないと難しいのが現状です。
高気密高断熱住宅を実現するには、設計をきちんとおこなう「設計力のある会社」を選ぶことが重要です。そうした会社は、必然的にそれなりの値段がかかる傾向があります。
高気密高断熱住宅は、初期費用はかかりますが、その後の光熱費削減や快適性、健康面でのメリットを考えると、長期的に見れば非常に価値のある投資です。しかし、そのコストを現実的に把握し、ご自身の予算やライフプランと照らし合わせることが、後悔しない家づくりの第一歩となります。
今回の情報が、あなたの理想の家づくりを具体的に考える上で役立つことを願っています。
高気密高断熱住宅について、もっと詳しく知りたい方へ
『ホントは安いエコハウス』 や 『エコハウスのウソ2』 といった書籍は、高気密高断熱住宅の本質を理解する上で非常に参考になります。ぜひ手にとってみてください。

自己紹介
30代半ば、2児の父。メーカー開発→インフラ事業企画へとキャリアを歩み、転勤&目先の給料UPに惹かれて転職したものの、仕事に苦しむ日々…。そんな私が唯一夢中になれたのが「家づくり」でした。
家づくり期間中は、毎日定時ダッシュで帰宅。仕事の開発は片手間に?、仕事で培った分析力を家づくりの研究にフルコミット!情報収集・見積もり交渉・住宅性能の比較など、施主視点での試行錯誤のすべてをこのブログにまとめています。
ちなみに育休は合計2年間取得。送り迎えから保育園会長までつとめています。(育児も本気!)
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