住宅を検討する際、高気密高断熱住宅は「長期的に光熱費が安くなる」という謳い文句で紹介されることがあります。
確かに、断熱材がスカスカだった昔の家と比較すればその通りでしょう。
しかし、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や長期優良住宅といった、既に一定の断熱性能を持つ住宅と比較した場合、高気密高断熱化による経済的なメリットは本当に大きいのでしょうか?
私自身の見解としては、必ずしもそうとは言えないのではないかと考えています。
光熱費の総額で考える:初期費用 vs. 毎年の光熱費
住宅のトータルな光熱費は、「初期費用」と「毎年の光熱費」の合計で算出されます。
高気密高断熱住宅は、一般的に初期費用が高くなる一方で、毎年の光熱費が抑えられるというイメージがあります。
この点で重要なのが、「断熱グレードを上げた際の価格差(初期費用の差額)」です。
一般的な計算では200万〜300万円程度の差額とされていますが、私のリサーチでは、実際には500万〜1000万円近い差が生じるケースも少なくありません。
その理由として、高気密高断熱住宅を手がけるのは、ローコストメーカーではなく、坪単価が高めの層をターゲットとする住宅会社が多い点が挙げられます。
断熱材や気密性を高めるだけでなく、それに伴う設計やその他の設備などもグレードアップされるため、結果的に総費用が大きく膨らむのです。
同じ住宅会社で、断熱性や気密性に関して複数のプランが用意されている場合でも、価格差は無視できません。
特に気密性を高めるには、より丁寧な施工管理が求められるため、どうしてもコストがかかります。
断熱性能と気密性能だけをピンポイントでオプションとして高めることが難しい現状も、価格差が大きくなる要因の一つです。
長期優良住宅レベルから、さらに断熱グレードG1レベルまで引き上げる際の価格差は、控えめに見ても500万円程度はあると考えられます。
もしこの500万円を現金で用意できるのであればまだしも、多くの方が住宅ローンを利用するでしょう。
仮に金利が1%で35年ローンを組んだ場合、総支払額は約600万円、金利が2%であれば約700万円にも膨らみます。
光熱費削減効果の検証:本当に元は取れるのか?
一方、高気密高断熱化によって削減できる光熱費はどの程度でしょうか?
我が家の光熱費を参考に、かなり高めに年間10万円の差が出ると仮定します。
単純計算では、60年〜70年かけてようやく初期費用の差額を回収できることになります。
これは、住宅の寿命を考えると、必ずしも経済的なメリットが大きいとは言えないのではないでしょうか。
経済性だけではない価値:快適性の向上は大きな魅力
もちろん、高気密高断熱住宅のメリットは光熱費の削減だけではありません。
室内の温度差が少なくなり、一年を通して快適な住環境が得られることは間違いありません。
もし、数百万円の追加費用を払ってでも、その快適性を手に入れたいというのであれば、初期投資として考えるのはアリだと思います。
実際、ローンなどの制約がなければ、私もアップグレードを検討したでしょう。
まとめ:高気密高断熱=光熱費大幅削減?
結論として、「高気密高断熱にしたから、光熱費が劇的に下がる」というのは、必ずしも当てはまらない可能性があります。
初期費用の増加と、現実的な光熱費の削減額を比較すると、費用対効果は慎重に検討する必要があるでしょう。
高気密高断熱住宅を検討する際は、単に「光熱費が安くなる」という言葉を鵜呑みにするのではなく、初期費用とのバランス、そして何よりも「快適性」という価値を総合的に判断することが重要だと感じています。
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